ガレージ内部構造

 

ヘルメットひよこ

この記事では、高気密高断熱住宅を建築するならハウスメーカーと工務店どちらがいいのか。私の経験を基に情報発信します。

 

その家、本当に高気密高断熱住宅ですか?

マイホームを検討するうえで、「高気密高断熱」という言葉はかならず耳にするかと思います。
あらゆるハウスメーカー、工務店とも、自分たちの建てる住宅は問題ありません!ということをHPなどでは謳っているわけですが、本当にそうでしょうか。

前回の記事でも紹介したとおり、現在国が求めている(一戸建て住宅においては義務化ではない)建築物省エネ法の断熱性能の基準は、20年以上前の1999年に制定されたものをベースにしています。
そして、H27年時点の国交省資料によると、約40%のビルダーが20年以上前に制定された断熱基準を満たす住宅を提供できていないとの結果が出ています。

※P27のスライドになります。

家電品やクルマで、20年前の基準を満たさないものが現在売られていたとしたら、誰も見向きしないでしょうが、マイホームに至っては平気で売られているし、わざわざ建築されているわけです。
また、そんな古い基準をベースにしている断熱性能を上回ったところで、残念ながら充分な性能を確保できているとは言えません。

HP上では「最高ランクの等級4の断熱性能を取得!」などと、さもすごいことのように謳っていますが、騙されてはいけません。
現在の日本の住宅における断熱性能は、世界的に見ても低レベルな水準であるのです。

性能の低い家

日本の住宅における問題点

このようなお寒い状況にある日本の住宅環境ですが、高齢化とともに断熱性能の低い家に住むことの脅威も現れてきました。

ヒートショックによる死者数の増加!寒い冬と寒い家が起こすリスクとは

ヒートショックとは?

室内温度の急激な変化が原因で、血圧が上下に大きく変動することをきっかけにして、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす症状です。

冬場の入浴時やトイレ等での発症が多く、住宅内に温度差があることが一因と言われています。

入浴中の溺死者は、近年増加傾向であり、そのほとんどを高齢者が占めています。
下図のとおり、近年では年間5,000人近くの方が命を落としており、これは交通事故による死亡者数(2020年:2,839名)を上回る数字です。
原因はヒートショックと考えられており、断熱性能の低い家が多い日本の悲しい現実です。高齢化の進行とともに今後も亡くなられる方は増えていくでしょう。

住宅内溺死者数推移

(出典:https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00623/)

原因として、住宅内の温度差が大きいことが挙げられます。
暖房器具を使っている部屋とそうでない部屋の温度差が大きく、血圧差が大きくなって身体がビックリしてしまうのです。

もともと日本の低性能な住宅では、家全体を暖めるにはコストが高く、人がいる部屋のみ暖房を行う・・・という習慣が浸透していますが、これはヒートショックを起こす第一歩なのです。
温度差があることは、ヒートショックのみならず、健康面でも悪影響です。

私がかつて住んでいた賃貸物件では、冬場は外気温とさして変わらないレベルまで冷え込んでおり、特に就寝時、電気毛布を使って身体は暖かでも外に出ている頭部はキンキンに冷えており、体調も悪くなりがちでした。
断熱性能の低い家が多い日本で、高齢化の進行とともにこうした問題も浮上してきたのです。

ヒートショック

家の中でも熱中症に!?もはや安全ではない日本の夏

温室効果ガスによる地球温暖化には諸説あるのは承知ですが、日本の夏は明らかに高温化してきていると感じます。
そのようななか、2020年の熱中症による救急車での搬送者のうち、40%は家の中で発症していたと報告されています。
多くは高齢者で、エアコンを使用していなかったことが原因のようですが・・・

熱中症搬送者
出典(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000024101.html)

私の実家でも、これまでエアコンは使わずとも乗り切れていたのですが、いよいよ昨今の猛暑に耐えられなくなりエアコンを導入しました。
もはやエアコンを使えない人は生きていけないのが、日本の夏なのです。

熱中症

冷暖房にかかるコストの増加

ヒートショックも熱中症も、対策として冷暖房をしっかり行うことに尽きるのですが、断熱性能の低い日本の住宅では、冷暖房を行ったところですぐに外へ逃げていきます
ましてや家中の冷暖房となると、電気料やガス料金は青天井・・・

だからこそ冷暖房は必要最低限、「堪え難きを堪え、忍び難きを忍ぶ」のが日本のこれまでの生活仕様だったのです。
しかし、そのような生活も、高齢化社会の到来&環境の変化に伴って立ち行かなくなるのが令和の日本でしょう。

金欠

憲法上、国民は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ようですが・・・

住宅とは人が生活していくうえで基本となるものです。衣食住揃わずに人が幸せになることが出来ません。
憲法で認められている生存権ですが、今の住宅環境で健康な生活を送れる保証があるのでしょうか。

未だ住宅の性能向上に及び腰の国の姿勢と、それに胡坐をかいている事業者たち。
彼らのおかげで多くの人々が、健康的な生活を営む機会を奪われているのです。

高気密高断熱住宅を求めるべき理由

誰しもマイホームを検討するなら、今までの不便さを解消し、快適な環境で健康的に生活することを望むはずです。
本当の高気密高断熱住宅であれば達成できるでしょう。

しかし、ここで問題になるのが、現状40%近いビルダーは、断熱性能基準を満たしていないという事実です。
さらに、断熱性能基準に達しているビルダーも、20年以上前の基準をクリアしているに過ぎず、それを以って高気密高断熱住宅の提供を謳われても失笑ものなわけです。

残念ながら、ほとんどのハウスメーカー&工務店は、日本の環境に充分適合し、安全快適に暮らせる住宅の提供は出来ていないと考えたほうがいいと思います。
と言い切れるのも、実際に私の体験を基に得た結論であるのですが、以下多くの方が検討するであろうハウスメーカー、工務店の選択における特徴をまとめます。

ハウスメーカーと工務店の特徴

ざっくりとですが、ハウスメーカーと工務店の違いは以下の通りです。

ハウスメーカーの特徴

施工エリア:全国展開が多く、各地に営業所があるのでアクセスは容易。施工場所の制限はないと考えて良い。

仕様:規格化されたラインアップから選択し、仕様にないものはオプションとして対応できることもある。

価格帯:下請けマージン、広告宣伝費等の販売経費は大きく、建物の規模よりも割高になりやすい。

工期:工法にもよるがスケジュール通り短期間で終わるものが多い。

建具等の品質:ローコストを売りにしているメーカーはコストなりの質だし、そうでなくても既製品メインの仕上げとなるので好みがわかれる。

メンテナンス対応:対応部署が準備されており心配ない。

工務店の特徴

施工エリア:地域密着型での経営がメインであり、施工場所が限定される。

仕様:規格はないので、建築主によって十人十色な住宅となるが、得意不得意分野は存在する。

価格帯:販売規模は小さい分、経費もかかっておらずハウスメーカーに比べて安い傾向にある。

工期:工法にもよるが、着工から半年以上かかることが多い。

建具等の品質:既製品から自然素材のものまで選択の幅あり。工務店によっては、玄関ドアやテーブル、収納棚など天然木によるオーダーメイドでの提供を標準仕様にしているものもある。

メンテナンス対応:人手が潤沢ではない事業者が多いので、立て込んでいるとなかなか対応できないケースもあり得る。

私たちの実体験

私たち夫婦がマイホームに求めたものは以下の通りです。(詳細はまた別記事の予定)
1:冬の寒さからの解放=高気密高断熱住宅
2:クルマ2台を横置きできるガレージ空間(支点となる柱などはガレージ内にないようにしたい)
3:その他諸々(耐震等級3以上、間取りや内外装のデザイン等・・・)

これらをベースに色々と調べていくと、日本の住宅性能は残念なレベルのものが数多く、これまで「そういうものだ」と思って過ごしてきた生活スタイルは、異常なものであったと痛感しました。
なにより、多くのビルダーが未だに高気密高断熱住宅の建築に至っていないというのは恐怖そのもので、外れクジを引いてたまるかとビルダー選びには家造りの大半の時間を費やすこととなりました。

家選び
ハウスメーカーや工務店のモデルハウスや完成見学会、体験宿泊や工場見学等、多くの住宅に触れてきましたが、問題になったのは以下の点でした。

冷え性の妻にとって、多くのハウスメーカーなどのモデルハウスは寒い空間

冬に訪問したハウスメーカーや工務店のモデルハウスでさえ寒いという妻
断熱性能が悪いのか、とあるハウスメーカーの営業さんに尋ねれば「(20年以上前に制定された)基準はクリアしています」という回答。

そりゃそうでしょうね、ハウスメーカーであれば、わざわざ基準外の規格で量産はしないでしょうから・・・。
しかしながら、モデルハウスでこの有様では・・・と感じるビルダーが数多かったのです

同時にいかに基準となる性能が低いのか、思い知ることとなりました。

寒いのには理由があった?

妻が寒いといった住宅は、いずれもエアコン暖房のみの住宅でした。
ここから暖房の種類も重要なファクターであることを学び、最終的にビルダー選びの決め手にもなりました。

ガレージについて、柱のない空間を可能とするハウスメーカーや工務店が限られる

クルマ2台を横置きにするガレージということで、希望寸法は開口7mほど×奥行7mほどとしておりましたが、無柱空間にすることはできないと言われることが多かったです。
軽量鉄骨構造等のメーカーでなければ難しいかと当時は思っていましたが、妻の「寒いからあのメーカーは絶対却下」で撃沈です。

圧倒的な予算オーバー

予算オーバーの主たる要因はガレージ・・・。
どのビルダーもオプション扱いです。

「注文住宅」と言うならオプションと言わずに注文通りに建築してみせろ!と思わずにはいられなかったのですが、要求水準を落とすしかないかと諦めかけてもいました。

予算オーバー
結果的には、いずれの問題も解決できるビルダーさんに出会えたことで、私たち夫婦の家造りは満足のいくものになりましたが、どういった決め手であったのか詳細は別記事にしたいと思います。

ハウスメーカーと工務店、どちらを選ぶべきなのか

本記事のテーマの回答として、私たち夫婦のビルダー選びの体験から、高気密高断熱住宅を検討するうえで少なくとも以下の点が重要であると思いました。

完成見学会やモデルハウスは、夏及び冬の厳しい気候の時季に必ず行くこと

これによりそのビルダーの建てる住宅のレベルが分かります。冷暖房の運転状況も確認することが大事です。

断熱基準について、建築物省エネ法、ZEH基準、HEAT20基準のどの等級を達成しているか確認すること

新たな基準が登場しましたが、所謂国の基準(建築物省エネ法)は緩いので、もっと厳しい基準を設けていきましょう、とやる気のあるビルダー達が設定したものです。
国の基準に満たないビルダーが多い中、性能をとことん突き詰めるビルダーもあり、両極化が激しいのが住宅業界の特徴でもあります。

この基準の話をして、話についてこないビルダーであればその時点で切り捨てて良いです。

規格化された家で充分希望を満たせるか、それとも満たせないか

ハウスメーカーであれば、注文住宅と言いつつも、設計や細かい仕様について正直融通は利きません
そのかわり、規格化されているだけあって基本的には完成品質も一定の水準は担保されていると思います。

外観も内装も、間取りや使用素材まで、オンリーワンな家造りを楽しみたい人は、最初から工務店のみを見て回ったほうが時間の節約になります。

ひとえに高気密高断熱といっても、どの程度のレベルまで求めればいいのでしょうか?
またそのために拘りたい点など諦めないといけないのでしょうか。
そのあたりのお話はまた別記事にて紹介したいと思います。